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創邦Q面

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~「この人、この曲」探訪の旅~

第5面第5面 福原徹の「孤雁 ―富樫左衛門のこと」

初演 創邦21第21回作品演奏会(2025年10月)
金子 泰
作曲 福原 徹
演奏 山登松和(弾き語り)、小早川修(謡)、福原徹(笛)、福原百之助、福原遊馬(以上囃子)

お休み期間を経てこのたびリニューアルした「創邦Q面」は、創邦21同人が仲間の同人を訪ね、その人の創作活動の中で「これ!」という曲のこと、その人自身のことをインタビューしつつ独断的に掘り進める企画に進化?しました。さてさてどんな旅になりますか…

笛という楽器によるものだろうか、三味線奏者の多い創邦21の中で、福原徹はいい意味での「異分子感」を持っていて、それを敢えてずっと保ち続けているように見受けられる。
他の同人も個性の強い人たちばかりで、それぞれに主義主張を持っているが、徹の場合は一種また独特であり、身体をやや斜にして上手端の笛の座につく舞台姿を彷彿とさせる、纏う空気の違いみたいなものを感ずる。

ところで創邦21の21回目となる作品演奏会は、代々木上原のムジカーザで、三回シリーズにして行った。ムジカーザは響きや雰囲気の良さで定評ある人気の小ホールである。創邦が演奏会を行うのは初めての場所なのだが、徹が2002年から03年にかけてひと月おきに連続演奏会を行ったゆえか、我々には、たぶん大丈夫だという安心感があり、そこで9人の同人が三夜に分かれて、小さい編成の作品を上演することになった。
今回Q面で取り上げる曲は、その際に初演した「孤雁―富樫左衛門のこと」(以下、「孤雁」)である。徹の創邦最新作でもあるし、私が文芸部分を担当したこの曲について、作曲者と語ってみたかったためでもある。

「孤雁」は、歌舞伎や長唄の「勧進帳」で判官一行を通してしまった関守・富樫の、その後を題材にしている。富樫は頼朝によって安宅の関の関守に任じられているが、その前には判官義経と戦って一敗地に塗れており、絶対に逃すものかと思っている。そこへ僅かな家来と共に現れた義経は落日の様子。富樫は思わず関を通す。そればかりか、奥州へその後を追い再会を果たそうとする…が、相手にされず、すとんと悟る。それら一連のできごとは、番卒だった男が、琵琶法師のように三絃で語るという構成である。

題材も徹と相談して決めた。登場人物は富樫と番卒だった男。番卒だった男を狂言回しでなく、実は主役にすること。義経役を具体的に出すか出さないかは何回も話し合い、結局、役としてはつくらなかった。三絃を抱える元番卒には山田流箏曲の山登松和さん、富樫は観世流シテ方の小早川修さん。そこに囃子で福原百之助さんと福原遊馬さんに御協演願った。ジャンルは多岐にわたれど徹が自身のコンサートシリーズなどで共演している、信頼できる人々である。

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