トップページ > ヨミモノ > [創邦Q面] 第4面 今藤美治郎の「日本昔話より ねずみ経」

ヨミモノヨミモノ

創邦Q面

創邦Q面

~「この人、この曲」探訪の旅~

第4面第4面 今藤美治郎の「日本昔話より ねずみ経」

美治郎の作品リストを眺めると、目につくのは「日本昔話より」の文字である。そう銘打っていないものも含めて昔話シリーズを挙げてみると、2004年の「ねずみ経」を皮切りに、翌5年の「たのきゅう」、8年の「ねずみ浄土」、13年の「鶴-やくそく-」、14年の「天の石笛」、21年の「大工と鬼六」、24年の「みやこ鏡」と7曲ある。このほかに創邦21の外で発表した曲もある。
「たのきゅう」は、十代目坂東三津五郎丈により歌舞伎化され、本興行で上演された。
しかしここでは、シリーズの始まりである「ねずみ経」を取り上げたい。

昔話の大きな特徴は、繰り返しである。一回目、二回目、そして三回目に何かが起こる。あるいは、正直者がやって宝を得ると、いじわる者が同じことをちょっとずついじわるにしてやった結果、大失敗する。この繰り返しに美治郎は衒うことなく挑んでいる。 それから、擬音や擬態語の軽妙さやおかしみ、それらを活かしながら、美治郎の作品は下卑ず、飄々としていて、牧歌的であり品が良い。絵が見えるようでもあり真似したくもなる。
ところが、そうやって素朴一辺倒の曲かと油断させておきつつ、次に聞こえてくるのは複雑な響の難しそうな合方。唄もよく聴けば難しそうなのに、曲全体からは、この上ない安心感が溢れている不思議。

なぜ昔話に思い至ったのでしょうか?癒し的な感じを求めてですか?
「別に癒しとは思ってませんね。自分が楽しいと思うことをしようと。それだけですね。」
昔話と一口に言うが、いろいろな話がある。いや、いろいろありそうでいて、話の内容はいくつかのパターンに分類される。
その中でどんなものを選んでいますか?
「たしかに、昔話って傾向が似ているものがありますね。内容で聞かせる話だと、まあちょっと曲にしにくいから、選ぶのは、おかしみがあるようなもの。気楽に笑えるところがあったりするもの。ほのぼの系。それから、最後にオチのあるようなもの、落語のような話。「ねずみ経」も「たのきゅう」も、そうなんですよね。でもそういうのは探しても意外とあんまりないのね。怖い話はけっこういっぱいあるんだけど。」
何作か、脚色で私もお手伝いをさせていただいたこともある。
そのひとつ、「鶴の恩返し」を題材にした「鶴―やくそく―」。
「やくそく」というサブタイトルをつけたのは美治郎で、このキーワードによって、昔話でありながら現実的なお話にもなった。男女の朗読(杵屋巳之助と杵屋六)がまた良かった。朗読が唄になり、また朗読になりという秀作は、美治郎に言わせると
「いや朗読ばっかりで、唄があまりないかんじでしたけど。」
と、そっけない。

曲をつくる前に、曲全体あるいは場面の絵をイメージされますか?
「うーん、まあイメージは浮かびますよね。」
昔話だと挿絵が付いていたりアニメになったりしていますけど、そういう挿絵に左右されます?
「そんなに影響されるつもりはないですけど。」
絵とかビジュアルがあっても楽しそうですが、美治郎さんは絵もお描きになるんだから、上演のときに何かご自身でお描きになるのはどうでしょう?
「…まあたしかに、その曲のこの部分はこの絵、って何枚か描いて紙芝居みたいなのもいいなと思いますけどね。でもかなり大きな絵を用意しないといけないよなあ。…最近よく一人コントでやってますよね、スケッチブックをめくるみたいなの。あれ一気に流行りましたね…会場によっては絵付きも、やってもいいかもしれませんね。」

X 創作Q面
ページトップへ

創邦21

創造する 邦楽の 21世紀