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創邦Q面

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~「この人、この曲」探訪の旅~

第4面第4面 今藤美治郎の「日本昔話より ねずみ経」

初演 創邦21第5回作品演奏会(2004年5月)
作曲 今藤美治郎
演奏 富士田新蔵、今藤政貴、今藤長一郎(以上唄)、今藤美治郎、杵屋栄八郎、今藤政十郎(以上三味線)、福原徹(笛)、藤舎呂英、望月太津之(以上打楽器)

お休み期間を経てこのたびリニューアルした「創邦Q面」は、創邦21同人が仲間の同人を訪ね、その人の創作活動の中で「これ!」という曲のこと、その人自身のことをインタビューしつつ独断的に掘り進める企画に進化?しました。さてさてどんな旅になりますか…

今藤美治郎は創邦21の設立メンバーのひとりである。
団体の声掛け人である今藤政太郎と杵屋淨貢は、若い頃、三世今藤長十郎の元でお互いを意識し合いながら演奏でも作曲でも腕を磨いた仲。恩師への御恩返しの意味でも、今度は若い世代に創作の意識と経験を積ませ、創作できる邦楽演奏家を仲間として育てていきたいと、創邦21を立ち上げた。
その三世長十郎を大叔父に持ち、祖母に今藤綾子、母が今藤文子という美治郎は、芸の系譜からも、血筋からも、世代的なことからも、政太郎や淨貢が「育ってもらいたい」と願う邦楽人の筆頭のひとりであったろうことは想像に難くない。

美治郎本人も、作曲(創作)は、やりたいことというよりも「せねばならないこと」と思っていたフシがある。
そんな時に大先輩に声を掛けられ、創邦に入った。ところが。
「勉強の場というから作曲の方法をいろいろ教えてもらえるかと思って入ってみたら、もう最初から作品を創ろう、できたら持ち寄って聴き合おうってなっちゃったでしょ?」
そうだった。レクチャーもアナライズもなく、いきなり実地に放り出されたのだ。
「もう苦しいばっかりでしたね。今も苦しいのはそうなんだけど。新しいものを作らなきゃと思うんだけど、何も思いつかない。」 思いつくようなことは既にやり尽されてしまっていると?
「というか、昔の人はよくこんな手をつくったなと思いますね。どういうふうに出て来ているんだ?って。何かをヒントにしていることもあるだろうけども、こんな手がどうやったら思いつくんだろうって、もう感心するばっかり。」
「例えば、そう、三代目正治郎の「元禄花見踊」だって、全部二上りで同じ勘所ばっかり使っているのに、どうしてこんなに展開するのだろう、こんなに色がかわるんだろうって思いますよね。それが作曲家のセンスなんでしょうけどね。」

新しい手、新しい音色を創り出すのは至難の業だ。「何も思いつかないというのがわかった」「もうやめちゃおうか、今回の演奏会は(曲を出さないで)休んじゃおうかと思ったり」という苦しさが続く中、新しいものをつくらなければいけないという呪縛から、ある時吹っ切れる。「自分が楽しいと思うことをやろう」と思い至った。
そこで学生時代に作曲法の授業でつくった「ねずみ経」を思い出す。昔話なら自分でもとっつきやすいかなと思ったという。
つまり美治郎は、昔話という水脈を得た。

創作Q面 創邦11面相 リレートーク
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