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創邦Q面

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~笛吹き同人福原徹が往く「この人、この曲」探訪の旅~

第3面 清元栄吉の「触草~クサニフレレバ」

栄吉:僕ね、このインタビューの曲って、「顔(おもて)」が来ると思っていたんですよ。

――ははあ。でも栄吉さんといったらまずは「触草」でしょう。創邦の第4回演奏会でこの「触草」。翌年の第5回は・・?

栄吉:「顔(おもて)」。「触草」から「顔」、「etude」、「からんくにゆき」と続く。だから、実はここから「顔」っていうのは、かなりの振り幅なんですよ。

――「顔」は、長龍郎さんとの共作でしたね。

栄吉:そうです。「触草」やって、次の例会で次回どうするかっていう話になって、健ちゃん(長龍郎)とたまたま目が合って。僕が先に「一緒にやる?」って言ったら、一瞬、間があって「いいっすよ」って。健ちゃんと金子さんと三人で、上原の喫茶店で何度も相談をしましたよね。

――栄吉さんは自分で会をやろうとかいうことは考えていないのですか。

栄吉:考えなくちゃいけないんでしょうけど、ほんとにその場、その時、目先のことしか考えない人間なんです、ダメなんですよ。

――さっき言ってらしたように、栄吉さんには清元っていうお店と他のお店があるわけじゃない?それを並べられたら面白いと思いますけどねえ。

栄吉:でもそれが「独りよがり」だったらしょうがないなと思ったりして。

――栄吉さんのことを、あの人はどうしてあんなのを作るんだろうとか興味を持っている人は、いっぱいいると思うんですけどね。おもしろい会になると思いますよ。

栄吉:それがねえ、こういうときには演奏家のスタンスになっちゃう。厨房の向こうっ側に行けない。

――その時は自作の曲は弾かないとか。

栄吉:自作は誰かに弾いてもらう?そのほうがいいな!でもさ、人に弾かせておいて「そうじゃないんだ」って口出しちゃいそう。ね。ほんと始末悪い(苦笑)。

――前のインタビューのときに、これから映画音楽みたいなのやりたいっておっしゃっていたけれど、今もそういうお気持ちですか。これからどういう作品を作りたいかっていうことですが。

栄吉:それはね、「自分が何をしたいか」というよりも、「受け取る側にどういう体験をしてもらいたいか」ってことについてなんです。
演奏だけで可能ならばそれでもちろんいいんだけど、演奏だけより、もっと直截に伝わるほかの要素があってもぜんぜんいいと思ってて、映画と言ったわけで。
・・相乗効果がある方がいいですよね・・演奏会だけの体験と、映画を観た体験とを比べたら、映画の方が強烈でしょう?人が、我を忘れるくらい何か感動の中にいるということを作りたいということですね、自分の作品じゃなくてもいいんだけども。

こないだ太田裕美の「木綿のハンカチーフ」を久しぶりに聴いたの。いい曲だね。筒美京平さん、すごいですね。「サザエさん」もあの人。歌謡曲を本気で作ってるなあと思いましたね。基本、あの時代のああいう曲、好きなんです。

(2019年6月)

ききて:福原徹、編集:金子泰

創作Q面 創邦11面相
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