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同人リレートーク

リレートーク 17走目

2020.05.11(月)

美治郎さんの貼られた画像に見とれています。
遠く輝く月。その下には、貴人の袖を翻したような藤の花房。
そして「詞の作り方を」というご質問。

 

……むむ? 「もう5月も半ばだけど、秋の本会で発表する『融』の歌詞はどうなっているの?」という裏メッセージの気配がする(深読みし過ぎ?)。
その『融』を引き合いに出しつつ、我流無手勝流で恐縮ですがお話させていただきます。

 

歌詞のことばを書き出す前に、
・題材を決める(古典の何かか、オリジナルか)、と同時に焦点を考える
・どういう性質、テイストで行くか、と同時にことばの時代感を考える
・歌詞の構成(話の流れ)
を決めます。

 

『融』でいえば、花鳥風月の「月」をテーマにしたものと最初から決まっていたのと、他の曲を見渡して、一つは能由来のものがあってもよさそうだったのとで、この題材にしました。
お能の『融』は、昔、源融(みなもとのとおる)が自邸である京都六条河原院に陸奥の塩竈をうつして塩を焼いていた話を基にして、知らずにその廃墟に来た僧の前に融が現れるというものです。「月もはや 出汐になりて」で始まり「月もはや 影かたぶきて」と終わる曲です。

 

見ていると時間がどんどん経ちます

 

『融』のように古典作品を下敷きにする場合、その世界を借りながら、どう読み替え・作り替えて、演奏の編成のことも想像しつつどのような邦楽にするかを考えます。下敷きのものがない時も然り。
どのような邦楽、というのは、唄ものなのか、筋のあるものなのか、新しみをどのくらい入れるか、みたいなところです。 作曲者と相談してみたりもします。

 

その上でいよいよことばを書き始めますが、ワードからセンテンスへ、パラグラフへ、とことばの繋がったところから始めることが多いです。
ちょうど、ジグソーパズルで四隅を決めたら、ここかな?と思ったピースから置いてみるようなものです。
それを見てあらかた予想がついたら、頭から書き出します。もちろん、書き出してみて、これはつまらないなと思ってやり直すことも多々あります。

 

歌詞は曲(音楽)がついてこそのものなので、ことばを尽くして思いの丈を書き連ねるというより、文字数と音も考えつつ、ことばの一つ一つの喚起力を大事にして簡潔に表すように、音楽にも十分にうたってもらえるようにと思っていますが、これがなかなか難しい(から面白いとも言えます)。
ちなみに、現在『融』は、頭から書き始めているところです。遅くなっておりますが…いやこれは決して“蕎麦屋の出前”ではありません!

 

現代の楽曲でも一回聴いただけで全部の歌詞が聞き取れるわけではないので、まして古語交じりの邦楽の歌詞が全部聞き取ってもらえるとは思いません。どこか引っかかるところがあればとは願っています。

 

こんなところですが、どうもパッとしない話でお粗末様です。

 

さて気をかえて、今藤政太郎同人に繋ぎます!
『勧進帳』は、長唄であれ歌舞伎であれ、これまで数えきれないほど演奏され、御覧になってきたと思いますが、三人の主要人物―弁慶、富樫、義経―の中で、政太郎先生が最も肩入れしてしまうのは誰ですか? どういうところが?そしてそれは曲の解釈や演奏にも反映していましたか?

 

金子 泰

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