トップページ > ヨミモノ > 同人コメント(同人9名全員による創作作品「藪の中」)

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同人コメント(プログラムより転載)

創立25周年を迎え、いつもと異なる企画をということで、同人全員で一つの作品「藪の中」を創る。しかし合同作品となると、いわゆる総花的な、そして大編成の長大な作品になりやすい。
そこで、作者である金子文芸同人と、作曲同人の中でやや浮いているかもしれない(と自覚する)私が実行委員になり、公平感などは全く考慮せず、ここをこの人に創ってもらいたい…ただその思いのみで分担を決め、さらに時間、編成など全て先に指定してしまう方式をとった。後から足したり削ったりするのではなく、あらかじめ条件を設定し、その中で作曲者が自由奔放に創る  これはすなわち、この謎の多い「藪の中」の登場人物たちが作品世界の中で自由闊達に語りだす、ということに繋がるはずだ。
同人たちは全員創立当初からのメンバーである。互いの手口は見透かされている。しかし、皆さん第一線で活躍する百戦錬磨の演奏家でもある。なにか仕掛けてくるに違いない。

福原 徹

今回の企画、いかがでしょうか?
わたくしは最後の部分を担当させていただきました。作品名が「藪の中」ですから直接的な音楽表現をして良いものか、かなり悩みましたが、わたくしなりですが無表現な部分も作品の表現として加えました。
かなりの難産でしたが、一つ引き出しが増えたような気がします。
わたくし作曲部分は演奏家の皆様の演奏そして表現力頼みですが、各同人作品の色によってどのような彩りになっていくか、一同人としても楽しみです。

今藤長龍郎

「藪の中」ということばは、元となった小説よりも、その〝いいまわし〟のほうが有名になってしまっているようだが、小説本体もさすが芥川龍之介の作品だけあって、おもしろい。私の担当部分は「木樵りの物語」で、言ってしまえば事件のあらましを語るだけなのだが、いろいろ想像をかきたてられるくだりでもある。木樵りは死骸を眼前に、なにを思ったか、感じたか。狼狽したのか、わりと落ち着いていたのか。彼にとって縹の水干・さび烏帽子の男は、一体どんな人物に映っていたのか?そして、犯人立候補者が三人もいるおかげで疑われずにすんでいる第一発見者は、本当にただの第一発見者だったのか?そんなこんなが頭の中でうず巻くまま、しかし曲自体は、殺人現場の深刻さを少しだけ意識しつつも淡々と流れるものにしようと思った。

今藤政貴

「藪の中」という文芸作品の題名は一般名詞として立派に通用している。作品の価値を証拠づける材料と言えるだろう。優れて主観的な物語であるとともに極めて客観的な物語のような気がする。何度熟読しても結論らしいものは出て来ない。作者は読者に甲斐のないとも言える問い掛けをしている。今回、創邦21の作曲者8人が作っても、文字通り藪の中である。みんなの所を照らし合わせてもよくわからないが、それが面白い。僕も惑わされつつ、結局登場人物のうたを作ることになった。文体に合わせて無調のようにも調性感のあるようにも聞こえるうたを作ってみた。歌い手はさぞ迷惑だったことだろう。でも仕方がない。これは「藪の中」だから…。

今藤政太郎

今回は25周年の企画として、一つの作品を同人一同で作曲した。
文芸の金子同人と笛の福原同人が作詞と構成を担当し、作曲箇所の割り当てや演奏編成を決めて作り上げるという、初めての試みでの作品発表会となる。
作曲者それぞれの作風や色がその構成にどの様にマッチしていくのか、どんな世界観が広がって行くのか、そんな事も想像しながら持ち場を作って行く作業となった。発表会当日が楽しみな作品である。

今藤美治郎

出来上がった歌詞を見ましたら「芥川作品を音楽にする!」といった類いのプレッシャーではなくて三亀松の弾きうたいが聴こえてまいりました。何度読んでもどうしてもアンコ入りの都々逸に見えましたのでそのとおりになりました。コロナを経てずいぶんと遠くにいってしまった昭和への私なりのオマージュでもございます。

清元栄吉

我々が普段使用している三味線は、時代により形や大きさが少しずつ変化しながら現代に至っております。
今回は古楽器を使った新作に挑戦してみました。使用する楽器は名工・石村近江による、現代にわずかに残る貴重な三味線です。遠く元禄時代の音色と、現代の題材がどう溶け合うのか、三味線音楽のこれからを考えるに、いい試みなのではないかと思います。

松永忠一郎

今回、同人全員で一曲を作り上げると言う初の冒険をしましたが、各々の特徴が各場面に生かされて、良い作品が出来上がりました。本番の空気、相乗効果が加わって、創邦の歴史に名を残す一曲となりますよう願います。
創作の未来を切り開くために、私達は頑張って参ります!

米川敏子

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