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同人リレートーク

リレートーク 26走目

2020.08.09(日)

こんにちは。笛吹き同人の福原徹です。
このリレートーク、新型コロナウイルスの影響で舞台や稽古が自粛、延期された状況下で、3月末に金子同人の発案でスタートしたのでした。
当時は、この状況がこれほど長引くとは思っておりませんでしたし、このリレートークもこんなに続くことになるとは予想しておりませんでした。
ここ数か月、手紙やメール等に「一日も早い終息を祈るばかりです」と書いていましたが、これもちょっと口にしづらくなって来たように感じます。最近は、「引き続き、お気をつけてお過ごしください」が自分の常套句となっております。

 

さて、今藤美治郎同人からのお題。
「笛を習い始めたきっかけや、恩師である寶山左衞門先生との素敵な思い出などを是非お聞かせ下さい。」

 

うぅー。
これは難しい。超重量級の宿題を頂戴してしまいました。
まして、それを簡潔にまとめるというのは、なんとも。
そうだ!ここのところ皆さん(いや、私がか?)更新が遅れ気味になっている感もあるので、今藤政貴同人が開拓してくださった「同じ同人による連続投稿方式」を勝手に採用させていただくことにします。

 

このリレートークの19走目に書いたように、恩師・寶先生は、誰に対してもいつも穏やかに丁寧に接する方でした。弟子にも怒鳴ったりするようなことは無く、いつもやさしく教えて下さいました。
「誰とも喧嘩しちゃあいけないよ」と、よくおっしゃっていました。「誰かに足を踏まれたら、怒るんじゃなくて、そんなところに足を出していた自分が悪うございました、と思え」というようなこともおっしゃっていました。まぁ勿論、これはちょっと極端な例だとは思いますが。
でも、怒りとかの感情を持たなかったのか、というと、そんなことはないはすです。むしろ、ご自分は敏感で、周りのこともよくご覧になっている、だからこそ自戒なさっていたのだと思います。そもそも、先生のような方が、お人よしだとか鈍いとか感受性が欠けているとか、そんなことはあり得ない。先生の作品や演奏は、そんな悠長な緩いものではありません。ある面では厳しく、むしろ真実を見抜くような物の見方をなさっていたはずです。

 

先生は、文字を書かれる際もゆっくり丁寧でしたが、文章もわかりやすく味わいのあるものをお書きになりました。同じ文章を使いまわしたりせず、その都度じっくり考えて書いておられました。
2001年、私は初めてのリサイタルを開きました。その当日のプログラムに載せる御挨拶文を、先生にお願いしたのですが、後日、「書けたよ」と渡された文章を拝見し、私は驚愕しました。

 

徹君おめでとう
貴公子のような徹君も、この世界で少しよごれてきた。
もっともっとよごれる前、徹君の満を持したリサイタルが今日、催される。
いろいろな難関を乗り越へて無で吹く笛の音を期待している。

 

冒頭の「貴公子」という単語も気になりましたが、「この世界で…よごれてきた」という言葉に、当時の私はとてもびっくりしたのです。
このまま載せてしまって良いものか?でも、今さら書き直してもらうわけにもいかない。

 

もちろん、結局、そのまま載せさせていただきました。
そして、この先生のお言葉で、私自身ある種の踏ん切りがついたというか、思いっきり会に臨む事ができたのです。
お客様にもこの御挨拶文は印象深かったようで、結果的に会のイメージを大きく支えていただいたようにも思います。
美治郎さんからのお題の「先生との素敵な思い出」というのとはちょっと異なるかも知れませんが、先生が書いて下さったこの御挨拶文は、私の大切な宝物になっています。

 

長々と失礼いたしました。
次回は笛を習い始めたきっかけについて、書かせていただくつもりです。
皆様、引き続き、くれぐれもお気をつけてお過ごしください。

 

福原徹

 

数年前、満開の時期に見に行った福島県三春の滝桜です。樹齢千年の大木。

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