クラシックの作曲専業と長唄の唄専門出、 結構面白いけど二人ともなかなかの論客、話がかみ合うかな?
- (さんざん2人でしゃべった後)
- 栄 吉
それはそうと「ぼくが~」(第8回「ぼくが作曲できない理由」)の思い出話でもしましょうよ。品川のDenny'sでみんなで最初に会ったのはいつだっけ?
- 政 貴
9月か10月。毎回さ、単独出品者が決まってから残りの人たちで共同作曲をやることになるでしょ。それから企画を始めるからいつもスケジュールがギリギリになる。どっかで1回か2回集まって分担を決めてそれを持ち寄ってどうにか曲にするという…この形が、どうなのかなって。もうすこし良いやり方があるんじゃないかと。
- 栄 吉
なるほど。でそのことと、政貴さんの、自分がなにか作品を作っていきたいというモチベーションとはある程度一致したの?
- 政 貴
多分ね。
- 栄 吉
で、あの企画案ってわけだ…
- 政 貴
誰かがポジティブな意味で企画作って“企画ありき”で皆がそれに賛同して「一緒にやろう」という形ね。栄吉さんの「顔」(第5回)なんかは、溶け合ってなかったかもしれないけど迫力あったし、「とにかくこうしたいんだ」と栄吉さんが思うことをやってたんだよね。「ぼくが~」の企画を思いついたとき金子さんにすぐ電話したの。こういうのやりたいから、金子さんに書いてもらいたいから、共同提案者になってくださいと。で、僕としてはまず番組の順は、トップにしてもらわないといけないんですと(笑)。
- 栄 吉
サプライズがあるから?
- 政 貴
そう、企画上ね(笑)。
- 政 貴
単音的な「ここに男が~」から盛り上がってくとこ、絶望から這いあがるとこね…うまくいったよね?こう、広がって夜が明けるかんじがあって…
- 栄 吉
あるある。坂をとぼとぼ行って、ぱあっとなる感じね。
- 政 貴
あそこ、直感的に作ったのと、“ホトケの手”とか使って技巧的に作ったのとあってさ、技巧的なほうを栄吉さんに見せたら「ちょっと…」みたいなこと言われて、それで直感的な方に戻したの。
- 栄 吉
いや、あれはね、坂をのぼった“盛り上がり”を充分にきかせるのに“どん底”のところで音数少ない方がいいって…すくなくともアレンジ的な要素は極力抜いて、ってそんな感じを。ま、意見交換ができてたってことです。僕は僕で…
- 政 貴
アレンジャーだったから、完全にね。でも相当大胆だよ、あれ三分の一くらいにしちゃってるよみんなの曲を…
- 栄 吉
“クライアント”の件りでしょ?
- 政 貴
あそこよくできてるよなあ。流れてるし、面白いし。
- 栄 吉
一個一個を尊重しちゃうと大変なことになるから、まあね。
- 政 貴
だって『こんなに切っちゃったんだぁ』って思ったからね。でも切ってるだけじゃなくてかなり腕を揮ってるじゃない?で、切ること、みんなもOKしてくれてる。まあ若手メンバーだけでやってたんだったらナンだけど、大御所といわれる人たちの曲をあんなふうに僕らが勝手にテイスト変えたり切り刻んだり…許しちゃうんだからすごいんですよ。
- 栄 吉
「創邦21」じゃなきゃできない(笑)。ま僕としても、人様と関わりながら作り出すからこその自由さとか、プロセスの楽しさとかの方に今、比重があるのかな。あの稽古直前の土壇場、政貴さん宅に忠一郎さんとぼくとで夜中に三味線持っていって「うー…まだできねぇ、こうで、じゃあぼくはこうで」ってやったの、よかったなぁ。
- 金 子
(突然ですが)ほんとうにそうやって顔突き合せて作ったの、はじめてじゃないですか。
- 栄 吉
またやりたいですよね。まだまだ質の高いものを作っていけると思うし、学べるし。
- 政 貴
あれ原石みたいなところがあるしね。
- 金 子
題材選びも難しいですね。
- 政 貴
“うまくいかない自分”とか“自己実現”とかばっかりがキーになっちゃってきたけどね。
- 栄 吉
そういう、“ドラマ”じゃなくても、もうちょっとニュートラルな何かで…でも時代を超えてる何か、みたいなのがね。山が綺麗だ、花が咲いてる、じゃなくて何かあったら面白いと思うんですよね。