第17回 創邦21公開講座「創作のキモ」レポート
シリーズ 古典名曲を深掘りする②
「松の翁」
三代目杵屋正治郎作曲
明治10年(1877)?
"マニアックな三番叟" 〜三代目正治郎の天才
松永 忠一郎
2025年が明けて早くも創作21は活動を開始しました。恒例の「創作のキモ」。17回目となります。
今回は今藤政太郎同人が講師となり、「古典名曲を深掘りする」シリーズの第二弾として長唄「松の翁」を取り上げ、「“マニアックな三番叟” ~三代目正治郎の天才」と題しまして、この曲のどこがすごいのか、徹底解説致しました。
まずは作曲者の三代目杵屋正治郎とはいかなる人物なのか?略年譜を見ながら正治郎の生涯を辿ってみると、早くから演奏家として認められた人物とわかりました。また「元禄花見踊」「鏡獅子」など正治郎の作品を幾つか挙げて、ポイントとなる部分を長龍郎さんと私とで実際に弾いて、聴いていただきました。明るく華やかな正治郎の作風、そして進取の気性を確認したような恰好です。
次いでいよいよ「松の翁」の解説。ベーシックな三番叟物の「翁千歳三番叟」と対照させ、たしかにこの曲が三番叟物の構成をとっていることを見た上で、三番叟物独特の囃子を模した合方や、使われている「手」の意味を詳しく伺いました。
さらに政太郎同人のお父様である四世藤舎呂船師が付けられた囃子の手や、それに関係した思い出話など、他では聞かれないお話を伺いました。
その他録音演奏を聴き、実演も含めた盛りだくさんな内容で講座を終えました。「松の翁」は、普通は古典曲のカテゴリーに入れられますが、作曲の逸話の新資料が数年前に発見されたことや、替手や囃子の手を工夫された方の話を今日のように伺ったりすると、曲が目の前にリアルに現れてくるような感じがありました。
夜公演でしたがお寒い中、たくさんのお客様にご来場いただき、充実した催しとなりました。ありがとうございました。
今後の創邦21のいろいろな催しにも期待していただきたいと思います。
(2025年1月29日 於 アコスタディオ)