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リレートーク 24走目

2020.07.14(火)

我ガ「こころの故郷」ハ粥ノ一椀ニ在リ――

 

いっそ漢字を連ねて返り点でも打ちたい心持になってきますが、
実家が禅宗の寺であるためか、病気の時に食べるものとしてではなく、日常的にお粥に接して来ました。
寒いからお粥がいいねと言い、暑いときの朝ごはんはお粥が一番だと言い、また何でもなくても「今日はお粥食べたいねえ」、
…なんていうのは、あまり一般的ではないんですってね。

 

お粥というのは、何かの片手間で「弱火でコトコト」煮るものではなく、ずっとその傍について細かく様子を見ながら一気に炊き上げていくものだと思っています。
鍋釜から噴出さぬ程度に弱めた火と頃合いの水分とで粥の粘度と光沢とを出していき、完成形の少し手前で火を止め、蓋を閉めて蒸らす。
ケでありながらどこかハレでもある、とさえ思わせるもの。

 

実家の寺で行われた何かの会のときに見たことが、心に残っています。普段事もなげに美味しい精進料理をばんばん作っている典座役の方が、早朝、新しい〈くど〉を前にして
「実はオレは〈くど〉で粥を炊いたことがない。しかしこれはこの会の典座として〈くど〉のためにも失敗するわけにはいかない」
と、細心の注意を払いに払って、実に見事なお粥を炊かれた。そして供された時、「これはすごい」と、お坊さんたち皆々感嘆し感動しながら、あっという間に平らげていた。
そんな光景、また昔の記憶を思い出すにつけ、また今も何かとつい炊いてしまうことからも、「粥ノ一椀ニ在リ」と言いたくなるわけです。

 

昨今は、私は白粥よりも鶏肉を入れた鶏粥を好んでおります。
米を研ぐ。水は米の5倍くらい。
一緒に鶏肉も入れて浸水後、そのまま強火で炊き始めます。
沸騰して吹きこぼれそうになったら少し火を弱め、水が少なそうだったら水をさし、あまりかき回さない。泡の具合が変わり、上側の水分が白濁してややもったりして、もういいかな、ちょっと早いかなという頃を見極め、蓋をして強火にして数秒、火を止めて蒸らします。

 

こんなかんじ。

 

朱のお椀に盛るとそれらしく見えますが、これは鶏入り。お味噌がよく合います。
ぜひ一度お試しになってみてください。

 

さて、次は今藤美治郎さんにご登場いただきます!
繊細な色彩感覚をお持ちの美治郎さんには、
「御自身も入れた創邦同人を色に喩えてください。その理由も少し教えてください」
でお願いいたします。

 

金子 泰

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